昨年、国境なき人形師たち ―マリオネット サン フロンティエール― (註・フランスのNGO 、メドサン サン フロンティエール(国境なき医師団)の名前にかけている)は、オーストラリアSICAのチェアーであるセバスチャン フリンが組織するクイーンズランド マルチカルチャー フェスティヴァルの一環として、様々な学校で人形劇の上演およびワークショップを行った。
国境なき人形師たちは、訓練を受けたプロフェッショナルの人形師が構成員となって、偏見、寛容、エイズ教育といったような複雑で、時には難しいテーマをも取り上げながら、世界中でコミュニケーションを促し、想像力を豊かにするような人形劇を創作している。
人形を使った直接のアピールは、非暴力によるコミュニケーションの大切さというメッセージを伝え、またインターナショナル チャイルド デヴロップメント プログラム(註・国際児童発達プログラム、1985年から、ノルウェーの心理学者、Karsten Ruknam Hundeideが研究・開発してきた児童の社会における発達に関するプログラム)への取り組み方を教えるうえで、子供にも大人にも成果をあげることができた。
グループの創設者であるエリカ サピールは次のように述べた。「実は、ピーター ジェンキンスとの出会いがそもそもの始まりだったのです。その頃、私は、六十歳にして南フランスで新しい生活を始めたばかりで、二十年以上もプロの人形師として活動していましたが、何かそれまでとは違った内容と目的を自分自身の活動に見いだしたかったのです。
ピーターと奥さんのイスティが訪ねてきたとき、私はピーターとちょっとした企画、ごく内輪のYES-QUESTで協力したのです。そして、その成果がこの“国境なき人形師たち”の青写真だったのです」
国境なき人形師たちのパフォーマンスでは、言葉によらないコミュニケーションの可能性を探るため、伝統的な演劇や仮面劇のテクニックを使った、素朴で簡単な作りの人形たちが主役である。
エリカとともに、グループにはイスラエル出身のレーチェル ダンクール バーグマン、スペインのピラール ロメロ カスティーリャそしてディアナ カプラン、ナオミ ヨエリがいる。
彼女たちは様々な賞を受賞したアーティストたちで、国際的な人形劇の舞台で活躍する監督、デザイナー、教育者として合わせて50年以上の経験があり、インド、イスラエル、フランス、メキシコ、ニューヨーク、ボスニア、そしてヨーロッパ各地の学校、病院その他の機関で子ともたちや教師たちに向けて活動を行ってきている。
人形に何ができるか?
エリカ・サピールは語る。― 人形は生き生きとして、生を帯びてくる物です。子供といわず大人といわず、観る者を虜にできるのは、この魔術があるからでしょう。
人形には素朴で率直で真に迫ったものがあります。また、人形は、すばやく、強く且つ直接メッセージを伝えることができます。人形を通して、私たちは突飛なこと、不条理なこと不可能なことにもふれることできるのです。
人形は、しばしば単純なお話を通して、最も厄介な問題でも観客がそこから距離を置き、問題への一連の解決に気づく助けとなるのです。
私たちは、エイズの蔓延や家庭内暴力、虐待や人権侵害といった問題に取り組む教師、看護士やソーシャル ワーカーを対象とした研修を行っています。
私たちのグループでは、世界中の恵まれないコミュニティーに向けて、人形を作り操作すること、また教育的、社会的、文化的目的を持った人形劇上演の企画、準備のお手伝いをするサービスを提供しているのです。
今ある行動パターンに疑問を投げかけ、それに取り組むための新しい方法を見出すこと。社会の現実に対するイメージをつくり、今ある社会現実を見直すこと。ディスカッション、対話ができる雰囲気を作り出すこと。教師や地域の人たちに、教育プログラムの枠組みの中で、自分たちの地域に根ざした人形劇を作る力をつけさせること。私たちの仕事では、人形劇を通して、こうした教育的目的を目指しています。
教師たちの感想
ワークショップが行われたブリスベンのミルペラ学校(註・障害を抱えた生徒のための学校)の先生たちは次のように述べている。
ミルペラの生徒のための人形劇は大成功だった。物静かな生徒、内気な生徒、あるいは問題のある生徒たちが、劇の創造的なプロセスを通じて彼ら自身のこういった壁を乗り越えられると、私たちは教師として真の喜びを感じる。
私たちの学校で現在進められている人形劇では、学校の看護師と協力して健康や衛生管理といったことが取り上げられるだろう。また、教室では教師たちが独自に、人種問題やいじめ、包括的な社会化や全く異なった環境に新たに入る経験といったテーマについての人形劇の製作を進めている。
人形劇を使うことを通して、苦しい問題を解決するために、その問題から距離をとることができるということは、とても強力な癒しの手段である。私たちはこういった可能性も探っていくつもりである。
マリオネット サン フロンティエール
人形劇の上演を観たセバスチャン フリンは次のように述べている。「人形師たちと共にきた特別な恩恵は、彼らが出演したクイーンズランド マルチカルチャー フェスティヴァルの数日前に私たちが撮った写真だった。アフリカの子供達の喜びに輝いている顔が写真に捉えられ、『クーリエ メール』紙の3ページに掲載された。それが人形劇師たちの出演とフェスティヴァル全体のよい宣伝になったのだ。」
締めくくりにエリカから一言
― 私は今、南フランスの小さな村に住んでいます(住民は50人しかいません)。7年前、外国人として、ほんの簡単なフランス語しか知らずに、前にも言いましたが、60歳でこの地へ移り住みに来たのです。一人でしたが、未来への夢があり幸せでした。
あれから4人の人がラティハンの道を教えられ、今でもラティハンのプロセスを続けています。私たちは、村の人たちにサービスを提供する小さな素敵なコミュニティーを立ち上げたのです。スブドは世界中で素晴らしいコミュニティーを築いていることを私は知っています。そして、私にとっては、それこそが現実なのです。どこへ行ってもスブドの人たちと唯一無二の素晴らしい経験を共にしてきました。
もしより多くの人たちが善きこと、恩寵、「そうあるべきこと」を信じる(100%確信する)ことができれば、その昔アルキメデスが「愛こそ、その答え」と言ったように、私たちは“世界を引き上げる”ことができるかもしれないと思うのです。
2009年4月発行スブド ボイスより


